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「世界に恥ずかしい」 デジタル庁構想にも冷や水…東証システム障害

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1 :2020/10/02(金) 08:10:36.32 ID:SxZte9jH9.net

◆「利益出るはずだったのに…」
 「今朝パソコンを開いたら、取引ができないと表示され驚いた」。JR東京駅近くで1日夕、電光表示の株価ボードを見ていた東京都中央区の人材紹介業男性(55)はこう明かした。
 男性はNTTが株式公開買い付けを始めたNTTドコモ株を売却するつもりだったといい「売れていたら900万円の利益が出るはずだった」と戸惑いを隠さなかった。男性のように、利益を得られなかった個人投資家はいたとみられる。
◆市場関係者注目の日に混乱
 システム障害が公になったのは市場が開く午前9時の直前で、既に注文を受けていた国内外の証券会社も混乱に陥った。大和証券は1時、「予期しない金額で取引が成立する可能性がある」と顧客に通知するなど対応に追われた。
 1日は国内景気の実態を示す「企業短期経済観測調査(日銀短観)」も発表され、市場関係者にとっては注目の日だった。短観を売買の判断材料にしようと考えていた投資家も多かったとみられる。午後4時半に記者会見した東証の宮原幸一郎社長は「市場の責任者として大変な責任を痛感している」と釈明を繰り返すほかなかった。

◆トラブルこれまでも
 1999年の全面システム化以降、東証はたびたび障害を起こしてきた。2005年11月には株式全銘柄の取引が約3時間にわたり停止。06年1月には旧ライブドアへの強制捜査を引き金にIT株への売り注文が殺到し、システムの処理能力を超えて株式取引が一時全面停止する事態に発展した。
 こうした状況を改善するため、東証は10年1月、大量・高速の注文に対応できる新しい売買システム「アローヘッド」を導入。その後も刷新を繰り返してきた。しかし18年10月には証券会社と東証をつなぐ回線がパンクし、売買の一時停止に追い込まれた。
◆国際金融センターに暗雲
 システム障害は日本市場の信頼失墜に直結しかねない。東京都北区のベテラン投資家の男性(77)は「世界に対して恥ずかしい」と吐き捨てた。加藤勝信官房長官も1日の記者会見で「大変遺憾」と苦言を呈した。
 もともと安倍政権時代の経済政策「アベノミクス」は、海外から投資を呼び込むことを重要視してきた。政府主導で公的年金の運用機関や日銀が株を買い入れる「禁じ手」も使い、株価の上昇を政策効果のアピール材料にしてきた。
 この方針を引き継いだ菅政権は、中国からの統制が強まる香港市場に代わって日本市場をアジアの国際金融センターに育てるとともに、看板政策としてIT部門強化のためのデジタル庁の開設を掲げている。2つの大きな目標は、システム障害で出はなをくじかれた形となった。
 ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏は「安心と安全は取引の根幹。政府がデジタル化を強く打ち出すなどし海外投資家を引きつけようとしていたところなのに、信頼が損なわれかねない事態だ」と話した。

東京新聞 2020年10月2日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/59100