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「マンガや小説にお金を使わない中高生」を、どう受け止めるべきか?

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1 :2021/05/15(土) 08:09:26.58 ID:XbAMIF539.net

現代ビジネス5.15/大橋 崇行成蹊大学文学部日本文学科准教授
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83072

 全国の多くの大学の中には、少し前まで高校生だった1年生向けの初年次教育で、まずは自己紹介のやり方から指導しているところが少なくない。そこで多くの大学生が言及するのは、好きな漫画や小説、映画ではなく、「好きなYouTuber」だ。こうした現象は、現代の若者、特に中高生がどのようにコンテンツを受容しているのかを反映しているのではないだろうか。

 最近「中高生が小説やマンガを読まなくなった」「彼女ら、彼らがコンテンツに支出するお金が減っている」という意見を目にする。これらを検討するにあたって、まずは筆者の専門であるライトノベルと、無料で読める小説投稿サイト「小説家になろう」の例から話を始めたい。

■ライトノベルは大人のもの?
 「10代をターゲットにしていたライトノベルの中心的な読者は、現在、30代以上になっている」。ライトノベルをめぐって、そのように言われることが少なくない。

 たしかに、小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿される「なろう系」小説には、明らかに中学生、高校生より上の世代の読者を想定して投稿され、書籍化に至っているものがある。

 たとえば、舞『異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう』や、あおおに『冒険者デビューには遅すぎる? 』では、30代のサラリーマンが異世界転生をして冒険する。

 また、棚架ユウ『転生したら剣でした』では、知性を持つ剣に異世界転生をしてしまった主人公が、猫耳の少女・フランの成長を、師匠のような立ち位置から見守ることになる。「成長見守りモノ」ともいえるこうしたジャンルは、「俺TUEEE系」や「悪役令嬢モノ」「追放冒険者モノ」ほど大きな流行にはなっていないものの、一定の読者を抱えている。

 一方で、このように他人の成長を見守るという、親のような視点に立つ物語、設定に中学生や高校生が共感できるかといえば、たしかにそれは難しい。

■「ライトノベルの読者=30代説」をたどる
 しかし、ライトノベル読者が30代以上になっているという言説は、2000年代の半ばからすでにあった。たとえば、2006年11月に『読売新聞』で3回にわたって連載された「ライトノベル進化論」では、すでに、ライトノベルのコアな読者が30代以上だとされている。

 記事が書かれた時期を考えれば、水野良『ロードス島戦記』(1988〜1993)や神坂一『スレイヤーズ』(1990〜)を10代のときに読んでいた世代が、そのまま年齢を重ねていたことになる。

 「ライトノベル読者=30代」説が流れたのは、こうした記事などで作られたイメージが、現代にまで根強く生き残った結果とも言える。

 一方、拙稿(「「異世界転生」小説、実はトレンドがめちゃめちゃ変化していた…!」、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80375)
でも触れたように、「小説家になろう」のサイトを読んでいる年代は、10代、20代がおよそ半分以上になるという。

 また、学園もののライトノベルや、メディアワークス文庫、スターツ出版文庫などのライト文芸で刊行されている泣ける恋愛青春モノの小説は、特に住野よる『君の膵臓をたべたい』以降、中高生のあいだで非常によく読まれている。

■本で買うか、ウェブで読むか
 それでは、こうした言説と実態とのズレは、なぜ生じるのだろうか。理由として考えられることの一つは、書籍の購入者と、小説を読んでいる層の乖離だ。

 たとえば「なろう系」小説でいえば、長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』がライトノベルの文庫判レーベルであるMF文庫Jから出ていたり、「なろう系」を中心に刊行しているヒーロー文庫のようなレーベルがあったりする。一方で、文庫よりも大きい四六判の判型で出ることも少なくない。この場合、どうしても文庫よりも価格が高くなる。いずれにせよ、1冊買うと1000円ほどはかかってしまう。

 高校生が手にしているお小遣いのデータは、各種アンケートから5000円程度が中央値だとわかる。これでは、1000円程度の書籍を定期的に購入するのは難しい。したがって、無料で読むことができるウェブサイトの「小説家になろう」は、中高生にとって、文庫判ライトノベルよりも遥かに接しやすいコンテンツだということになる。

■現代のコンテンツと中高生たち
 立ち止まって考えてみれば、ライトノベル、「なろう系」小説に限らず、現代においてはさまざまなコンテンツに対して、中高生が使うお金が減っているように見える。