最新記事(外部)
お勧め記事(外部)

年収の3分の1も!低所得世帯を苦しめる教育費地獄

スポンサーリンク

1:蝙蝠傘子 ★ 2016/04/03(日) 15:55:17.43 ID:CAP_USER*.net

 春。出会いと別れの季節。そして就職と進学の季節でもある。私も10年以上前の春に大学に進学し、同時に日本育英会(現・日本学生支援機構)の第一種奨学金(月額5万円、無利子)を手にした。最初に振り込まれたときは、通帳に印字された数字を見ながら「やっべえ! 何に使おう」なんて無邪気にニヤニヤしていた。ちなみに、奨学金の返済は今も続いている。
 私の実家は平均的な中産階級であったと自負しているが、私たちきょうだいが、みんなで親のすねをかじっていたので、JAの教育ローンも利用した(そして、こちらの返済もいまだに続いている)。さまざまな民間金融機関が教育ローンを提供しているが、公的融資制度である「国の教育ローン」は日本政策金融公庫が取り扱っている。
■私立大学理系に進むと高校進学以降1000万円が必要
 その日本政策金融公庫はかねてから「国の教育ローン」利用者を対象とした『教育費負担の実態調査』を行っているが、昨年度から、より調査対象を拡大させた。今回は2月23日に発表された調査結果を見ていきたい。
 こちらの調査、対象は「25歳以上64歳以下の男女、かつ、高校生以上の子供を持つ保護者」となっており、各都道府県から100名、合計4700人から回答を得ている。調査の中で、主たる家計維持者の平均年齢は51.0歳、世帯年収は平均834.4万円だ。厚生労働省が昨年発表した「国民生活基礎調査」の全世帯平均年収の528.9万円と比べると、そもそも結構高い数字になっている。年金生活者が含まれていないし、高校生以上の子どもがいる人を対象にしているため、また、インターネット調査ということもあってのことだろう。

 さて、「高校入学から大学卒業までに必要な入在学費用(※)」は平均で899.4万円だ。高校卒業までに232.4万円、大学に進学するとさらに667.0万円が必要となっているが、大学では進学先によって、大きな差がある。

 国公立大は689.9万円、私立大文系は907.9万円、私立大理系は1050.4万円。最大で400万弱の開きだ。自分の子どもが私立大の理系に進学したいと言い出したら、こんこんと説教してやりたい気分になる数字である。今のうちから、どうすれば子どもが国公立以外の大学に行く気をなくすかについて研究しておきたい。
(※)入在学費用は入学費用と在学費用を合算したもの。入学費用は受験費用や入学金、入学しなかった学校への入学金など、在学費用は学校教育費(授業料、通学費、教材の購入費など)と家庭教育費(塾・家庭教師の月謝、お稽古ごとにかかる費用など)を指す。
■教育費捻出のため厳しい節約低収入世帯はますます逼迫か
 入在学費用の額の大きさにも驚かされたが、次にこの調査の中で、私が最も目を引かれた二つの項目を紹介したい。
 まずは「年収階層別にみた世帯年収に占める在学費用の割合」。全体での平均は17.8%だが、世帯年収が200万円以上400万円未満の場合、負担の割合は36.8%に上る。教育関連費用を「エンジェル係数」と名づけたのは野村證券だが、年収の3分の1以上を持っていく天使というのも、なかなかえげつない。

 もちろん、えげつないと言ってみたものの、子どもが悪者なわけではない。高額の入学金や授業料、「大卒以上じゃないと採用しないよ」みたいな風潮のほうが問題だ。保護者としても、子どもが望む教育を受けさせてやりたいという気持ちなのだろう。ただ、この負担割合はあまりにも重い。
 さらにこの「200万円以上400万円未満」世帯の状況が伝わってくるのが、「教育費捻出のために節約している支出」(三つまでの複数回答)という項目だ。同世帯ではほかの年収階層と大きく異なり、「食費」「外食費」「衣類の購入費」の3項目の割合が大きく伸びた。同時に交際費、装飾品の購入費、保護者のこづかいなどの割合は下がっている。

 これをどう見るか。「食費を削った分、お歳暮はちゃんと贈ろう」なんて世帯が増えている? 恐らくは違うだろう。すでに削れる分は削っていたうえで、「衣」「食」も節約を始めたのではないだろうか。つまり、何が要因かまではわからないが、この年収階層の状況はますます逼迫してきているのではということだ。
 思い出すのは、大学生時代の授業料免除対象者発表の時期の光景だ。私は学生寮に入っていて、周りには財政的な理由から半額免除、全額免除を受けている友人も多かった。大学から戻ってきて、「いやあ、よかったよかった」と言う者もいれば、「おお。俺、落ちてたわ」と力なく笑いながら、灰皿からシケモク(まだ吸う部分の残っているタバコの吸い殻)を取り上げ、火を点ける者もいた。
■母子・父子家庭には優遇措置もニーズに合わせ教育ローンは進化中
 大学時代の友人の乾いた笑い声を思い出しつつ、日本政策金融公庫生活衛生業務部(「国の教育ローン」担当部署)教育貸付グループの秋山彰さんにいろいろと話を聞いてみた。
 少子化と言われて久しいが、国の教育ローンの貸付状況を見てみると、ここ数年大きな変化はない。2014(平成26)年度は12.4万件の利用があり、1件あたりの貸付単価は145.1万円だ。
「入在学費用が高止まりし、教育費負担が家計に重くのしかかっているのが現状ですので、利用者のニーズも踏まえて、融資限度額を引き上げたり、母子・父子家庭への優遇措置を導入したりしています。国の教育ローンは、『進学に関する家庭の経済的負担の軽減』と『教育の機会均等』を目的としており、私たちにできることがあれば、引き続き支援していきたいと考えます」(秋山さん)
 海外留学資金としての貸付も増えている。融資件数は2012年(876件)から14年(1526件)の間に、1.7倍強も増えた。海外留学は国内の高校・大学等向けの貸付(平均123万円)と比べて、1件当たり250万円と2倍になっており、その負担の大きさが伺える。政府も海外留学に対する支援を強化しているが、この4月からは海外留学資金の利用要件を緩和し、さらに利便性向上を図る。

 ところで、最近、奨学金の返済に苦しむ人の話をよく聞く。「国の教育ローン」の場合は、どうなのだろうか。
「奨学金の場合、本人の評定や成績で決まり、返済も本人が負いますが、私たちは貸付時に金融審査を行い、返済するのは基本的に保護者の方です。そういった違いもあり、最近でも返済が無理になったというケースは増加してはいません。何らかの事情が生じて返済が苦しくなった場合には、返済の相談も承っています」(秋山さん)
 そうですか。ちょっとほっとしました。必要なときが来たら、また伺いますので、よろしくお願いします。
唐仁原俊博[ライター]
(終わり)
DIAMOND  2016年4月2日
http://diamond.jp/articles/-/88949